駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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「あ〜…屯所に風呂が出来たのには本当に感謝だよなぁ」
夜番の巡察時、藤堂は浪士と鉢合わせし刀を交えることになり浪士を斬ってしまった。
身体に浴びた血は水ではなかなか落ちず、風呂が出来る前は何かと苦労したものだ。
「血の臭いしながら寝なくていいのは最高だよね〜っ…と!」
藤堂の隊の隊士達は、藤堂が報告をしている間に風呂を済ませていたので、独り占め出来るのも嬉しい。
着物を脱ぎ性格からきちんと畳むと、手拭いを肩に乗せ風呂場の戸を開ける。
――――ガラッ…
「………」
「………」
可笑しい。 独り占めなはずの風呂場で視線が絡み合っている。
戸に触れていた手がガタガタと震えるのと同時に、脱衣場の戸が勢いよく開く。
「きっ…」
「叫ぶなっ! 馬鹿っ!!」
―――バシャァァァンッッ!
顔を赤く染める藤堂を押し退け、浴室に駆け込んだ永倉は、矢央のとるであろう行動を先読みし、叫ばれる前に桶に汲んであったお湯をぶちまけた。
「ぶっ!?」
そのおかげで叫ばずに済み、他に誰かが来るようなことはないだろう。
が、騒ぎが収まったわけではない。
先に風呂に入っていた矢央、後に入って来た藤堂、両者共に顔を真っ赤にして固まったままだ。
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