駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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風呂騒動があって数日後、将軍家茂は江戸を発し京に向かった。
第二次長州征伐の始まりである。
後に大阪城へ入るまで新撰組幹部も将軍警護に辺り、忙しい日々を過ごした。
そんな中、矢央は変わらない日常を過ごす。
「あ〜あ、ほんと見事にみんな留守だよ。 これで屯所襲われたら終わりじゃないの?」
松本に言われてからというもの、矢央は毎日屯所の掃除に精を出していた。
手拭いを水で湿らせ、廊下をバタバタと走り拭きしていたのをピタリと止まり、カラッと晴れた空を見上げ目を細めた。
近藤を初めとし、矢央と仲が良い幹部はほぼ出払ってしまっていて、屯所に残る知り合いといえば沖田や島田くらいである。
せめての救いは沖田がいてくれたことだと、ホッと息をつくが、残された沖田は最近機嫌があまり宜しくなかった。
「近藤さんが危険な場所に行くのに、沖田さんはお留守番を命じられて…かなり怒ってたね。 沖田さん、土方さんに…」
あれには驚いた。 普段穏やかな沖田が、目を吊り上げて土方に食って掛かったのには。
理由としては身体のことで、最近また体調不良だった沖田を気遣ってなのだが、土方の対応は沖田のプライドを傷付けたのだろう。
「でも、こればかりは仕方ないよね……」
機嫌を直してもらうために、後で甘いものでも差し入れしよう。
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