駆け抜けた少女ー二幕ー【完】



「近藤さんは、みんなの優しさに甘えてます。 よく分からないけど、上に立つ人はそれなりに苦労があるけど、その人に着いて来てくれる人あっての苦労だったり喜びだったりすると思うんです。

永倉さんは、今の近藤さんは仲間を仲間と思っていないと言ってました。 私もそうだと感じます。

近藤さん、近藤さんが今こうしていられるのは誰のおかげなんですか?」




世話になった近藤の態度を指摘するのは、すごく勇気のいる行動だった。

自分が物言えた立場にあるわけないと、しかし、言わずにいられなかった。


仲間想いな新撰組が、仲間を蔑ろにしないでほしいと願いを込めた。



「私より若いというのに。 なぁ、歳」

「ああ?」

「彼女は、成長したな」


矢央に言われて気づいた、己のエゴを隊士に押し付けていたのだと。

頭として、しっかり引っ張って行くというのを間違った意味として捉えていたことに。


「彼女には、まだまだ教えてやらねばならぬことばかりだと思っていたが。 今回は、逆に教えられてしまったよ」



へこむ近藤に間違っていないとは言えなかった。

局長としての振る舞いは、あれで正しいとさえ思う。

威厳ある大きな男であってほしいと。

しかし、仲間としてならば……


「では行ってくるよ」

「近藤さん、俺はあんたを信じてるぜ」

「……ありがとう」



廊下を歩いて行く近藤の背中を見送りながら、土方はグッと拳を握った。

小さく見えた近藤の背中に、土方は熱いものが込み上げてくる。


「俺もしっかりしねぇとな」


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