駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


『……おまんのこと、友とも仲間とも思わん』


『おまんは分かってるかが。 新選組と、わしらは敵同士じゃ!? そんな場所に帰りたいとぬかすおまんをっ…友とは…言えんっぜよっ』


別れ際の以蔵の言葉。


『おまんは、龍馬を裏切るつもりなんか…?』


そう尋ねた時の以蔵の眼は、悲しみに揺らいでいた。



『早よう行くぜよっ! おまんの顔など見とうないきっ。 とっととわしの前から消え失せろ』


それが本当に最後に交わした言葉であり、最後に見た以蔵は刀を抜く寸前の威嚇する姿である。


―――嫌われた。 完全に。



「…以蔵は、矢央を気に入ってたぜよ」


坂本は、風に身を任せるように瞼をとざした。


口数が少ない以蔵が、矢央の世話をするようになってから次第に口数を増やし、そのほとんどが矢央に関することだったと語る。

だからこそ、坂本には伝えなくてならないことがあった。



「以蔵は、亡くなった」



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