駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第六話*平凡な日常から…
「いてて……」
「大丈夫ですか?」
緑が色付き始めた六月半ば、今日は生憎の雨だ。
巡察から帰って来て早々に部屋にこもってしまった永倉は、廊下を通りかかった矢央を呼び止めた。
「お前、救護隊だろ。 背中揉んでくれ」
「…救護隊だからって、それ関係ないじゃないですか」
部屋の入口に脱ぎ捨てられている隊服に血が散らばっていたのを見て、巡察中に一戦交えてきたことを知る。
そういえば、二番隊の隊士達が浪士を数名捕縛していた。
「それでどうしたんですか? 普段鍛えてる、永倉さんが腰痛なんて」
ぎっくり腰ですか。 と言うと、永倉が 「誰がっ…!」 と反発の意を唱えようとしたが、グキッと腰が痛み畳に伏せてしまった。
「新八、腰は大丈夫か?」
永倉の背に乗り腰を揉んでいると、二番隊と共に行動していた十番隊の原田が部屋を覗き込んだ。
「駄目みたいだな」
「ねぇ、原田さん、永倉さんはどうしてこうなったんですか?」
痛い痛いと呻き声を上げる、珍しく情けない姿に苦笑いだ。
「それがな、さっきやり合った奴等の一人が手足れでよ。 しかも新八の流派を無茶苦茶心得てる奴だったから、珍しく手こずったわけだ」
「言っとくが、負けちゃいねぇからな!」
「つまりそれって、永倉さんは弱点をつかれたわけだ!」
「…ンに、楽しそうに言ってんだてめぇは!」
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