駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
永倉は新撰組でも沖田と並ぶ程の剣の使い手だったが、たった一つ弱点といえるものがあった。
「神道無念流ってのは"力の剣"っつってな、一撃一撃にそりゃ力がこもってて重てぇのなんのって。 んで、大概一撃受けりゃ身体が痺れてバッサリとなるんだが…」
「ならなかったんですね」
「神道無念流を相手にするならば胴を狙え。と言われるだけあり、さすがの永倉さんも技を受け流され続けた挙げ句、胴ばかり狙われては駄目でしたか」
「斎藤さんも見てたの?」
永倉の隣人である斎藤は、開きっぱなしの部屋の前を通る際に見えた光景に息を吐いた。
「チッ! 俺の剣をあれだけ交わせるたぁ、大したもんだよ」
「弱点、克服しなきゃですね!」
「だから、笑ってんじゃねぇよ!」
普段威張り倒している永倉の弱点、それは腰。
それを知った矢央は、次に怒られたら間違いなく腰を狙おうと思ったとか思わなかったとか。
「それにしても――…こうして見てるとあれだな、うん」
斎藤が去った後も、まだ腰を揉んでいる矢央を見て、原田は面白そうに口角を吊り上げた。
「なんですかぁ? あ、永倉さんこの辺はどうです?」
「っ…ああ、もうちょい強めで頼む」
「昔はそうは思わなかったが、お前等そうしてると夫婦みてぇだな」
「「………はあ?」」
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