駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
この内部揉めは、新撰組の重要さを語る会津藩主・松平容保の計らいにより何とかおさまることとなる。
永倉が発した 「自分たちは、家臣ではなく同士ではないのか」 と言う発言に、近藤はこの事の重さを重々感じたのは言うまでもない。
しかし、この後、近藤の態度が変わることはなかった。
それは近藤にも思うことあってのことだと知るには、まだまだ先のことである。
幹部が上司を訴え出た処罰として、筆頭者である永倉だけ謹慎処分を受けるのだが、
このこともあってか、新撰組の内部揉めは更に広がりを見せる。
これが元治元年八月の出来事。
そして同年九月、近藤・藤堂含めた数名が隊士募集のため江戸へと発った。
その江戸で隊士を集め戻ってきてからが、また新撰組にとって波乱の幕開けとなるのである。
そのことを知ってか知らずが、矢央は秋の訪れを待ち遠しく思いながら今日も隊務に励んだ。
「秋になったら、焼き芋したいなぁ」
迫る危機に、今は誰も気づきはしない。
「ふふふ。 新撰組ねぇ。 お会いするのが楽しみですね」