駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
最近の二人の仲が良好なのは、土方が追いやった伊東と床に伏せる事が増えた沖田が関わっている。
喧嘩する程仲が良いとはよく言うが、この二人はまさにその通りだと周りが思うのだ。
「ところで、伊東はなんて言ってきやがったんだ」
真面目な表情になり尋ねる土方、矢央はハアと溜め息を吐く。
「何か秘密を知られてる…かもしれないです」
「やはりな」
「ん?」
「斎藤や山崎君から報告を受けてんだよ。 伊東が、お前の事調べて回ってるってな」
何を調べているのかは分かってはいないが、矢央の身近な人間にはまだ探りを入れていない。
土方は、また舌打ちをする。
「…ちっ。 まあた、ややこしいことになりそうだぜ」
最初から伊東が新撰組に入る事が気に食わなかった土方は、新撰組に対しても矢央に対しても、伊東が何かを仕掛けてくるのではないかと思っていた。
どうやら、先に矢央に対して動きだしたところをみれば、
「まさか、お前を利用しようとしてんのか…」
と、土方の呟きに対して矢央は答える。
「けど、私、未来については殆ど知りませんよ」
「馬鹿だもんな。 ちぃったぁ勉強しろよ」
「うっさい。 馬鹿でも馬鹿なりに生きて行けるんですからね!」
またしても話題が逸れたことに緊迫ムードは去り、土方は 「とりあえずは様子をみるしかねぇ」 と、矢央に注意を呼び掛けた。
「お…っと、そうだ。 矢央、後で茶を頼む」
部屋へ戻ろうとしたが思い止まり振り返った土方に、薪の支度をしながら頷いた。
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