駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第七話*恋の芽生と決意
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あの後、矢央は山崎の下へ運ばれ藤堂達は土方にこっぴどい説教を受けた。
『間島さん、本当にすみませんでした。 俺のこの悪い癖には、俺自身手を焼きます…』
医務室に運ばれる前、以前話した時のような穏やかで気弱そうな熊木に戻っていた。
何度も頭を下げられる中で、一体どちらが本当の熊木という人間かと困惑しながらも、素直に謝罪されてしまえば怒る理由がなくなってしまった矢央は
『私もムキになってごめんなさい』
と、謝るしかなかった。
「全治二週間ちゅうとこやな」
「ええっ、そんなに?」
「もう少し力が強かってみ、お前骨までいってもうてるで。 それで済んでええと思わんかい」
肩から胸にかけてと脇腹の打ち身が痣となり、腫れ上がってろくに身体の自由がきかない。
しかし骨には一切傷がないだけ、本当に良かったと思う。
「ンで、その男は大丈夫なんか?」
医療具を片付けながら、さっきの試合を語ってみると、山崎は渋い表情を見せていた。
ズキッと痛む脇腹をおさえながら身体を起こす。
「大丈夫…とは言いきれない。 嫌な予感がするんです」
胸騒ぎは一向におさまることはなかった。
「お前にしては珍しいのぉ。 ただの阿保かと思っとったらちゃうわけか」
「……山崎さんも土方さんも、失礼って言葉を知らないの?」
「お前に対してはない」
きっぱり言われると、案外すんなり受け入れられてしまうから不思議だ。
相手に悪気がないと分かっているからかもしれないが。
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