駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「今日の新八は機嫌が良い! なんせなかなか落ちなかった夕月を落としたんだからよぉ!」

「俺が本気を出せば、落ちねぇ女はいねぇぜ」


永倉の機嫌が良い理由は、どうやら島原の遊女を口説き落としたからだったらしく、それを知った藤堂は尋ねた。


「ああ、だから最近毎日通ってたんだ? なにそんなに良い女なわけ?」

「ああ、別嬪さんだぜ」

「へぇ。 女好きな新八さんが言うんだから、相当なんだろうね」

"女好き"と、普段な切れるような言葉を言われても、やはり今日の永倉は怒らなかった。

酒も良く進み、矢央と沖田が買ってきた団子も既に三個目を食べ初めている。


「んでよ、新八の奴、鼻の下伸ばしっぱなしでな……て、おい矢央どうした?」


永倉と夕月の話題で盛り上がっていると、ふと静かになった矢央に気付いた原田。

眠たそうに瞼を落としかけている矢央を覗いたのは沖田である。



「矢央さんは疲れたんでしょう。 丁度私もおいとましようと思っていましたし、矢央さん部屋まで送ります」

「え、矢央ちゃん大丈夫!?じゃあ、僕が送る…」

「いいえ、私が送ります。平助さんは、まだ飲んでいたいでしょう? それに治療の後、私が無理矢理お付き合いさせてしまいましたからね」


心配する藤堂を押さえ付け、付け入る隙なく矢央を立たせた沖田は、身体を気遣うように肩を抱き歩くのを手助けする。

その様子を見て眉を寄せる藤堂を、原田と永倉はやれやれといった表情で見ながら沖田らを見送った。


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