駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

***

「矢央さん、大丈夫ですか?」

「……うん。 大丈夫なんですけど」


部屋の前で止まり、曖昧に返事する矢央を見て沖田は 「少しお話しましょうか」 と、矢央と二人縁側に腰掛けた。


身体は痛む。 それでも我慢出来ないほどではないのに、急に気分が悪くなった。


――――何故?



「ねぇ矢央さん、あなたが此方に来てから随分と時が経ち、環境も変わりました。 そして変わって行くのは、環境だけではなく私達もではないでしょうか」


夏の夜空に己を主張するように真ん丸な満月が浮かび、沖田の少し切なげな顔を白く照らす。

そんな沖田の言いたいことが分からず矢央は小首を傾げる。


「矢央さんは、もうすっかり大人の女性になられたと言うことです」

「大人?」

「先程気分が優れなかったのは、身体の不調ではなく心の戸惑いではないですか」

「え?」


何故かドキッと胸が騒いだ。

矢央の瞳が左右に揺れるのを、沖田は真っ直ぐ見つめ小さく笑みを浮かべる。


――やはりそうか。 と、己の考えが当たっていたことを知り、沖田は更に続ける。


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