駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
この想いを伝えて、彼女はきっと困惑している。
しかし、伝えずにはいられなかった。
最近は矢央を女性として意識する輩も増え、女性と知らなくても好意をよせる厄介な輩もいる。
きっとこの先、どんなに想っても己の恋が成就することはない。
結核という名の鎖に縛られ、未来に希望が持てない己では、矢央を愛することは出来ても、守り共に生きることは難しい。
「ゴホッ―…ゴホッゴホッ!」
歩きながら咳き込むと肺に痛みが走り、掌にわずかに血が浮かぶ。
「……はあ。 情けない。 誰にも負けない自信はあるのに、病には勝てないんですね」
――あの世で、貴方を待っている。
そう言って旅立って行ったお華と、その生まれ変わりの矢央、二人に恋をした沖田は
どちらも現世では叶うことはないのだと胸を痛めた。
血のついた口元を拭い、また月を見上げる。
「お華、私は彼女を命尽きるその時まで見守ろうと思います。 貴女の分まで……」
一風の風が、沖田の長い髪を揺らした。
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