駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「この間、近藤局長と酒を飲んでいた時ね、心配しておられたんだよ間島君のこと」
「近藤さんが?」
何故か未だに手首辺りを掴まれたまま廊下を歩く。
武田の後頭部を見ながら、ジーンと感動に浸る矢央。
「間島君を家族のように大切に想っておられた。 出来るならば、安全な場所で保護したいと」
「保護、ですか?」
家族のように大切に、まではジーンと心に響いたが、後半部分からあれれ(?)と思いはじめる。
「間島君は、男子の割に華奢で剣が扱えないではないか。 剣に命をかける近藤局長にとっては、剣を扱えない間島君では、この先生き延びて行けるのかと…」
おかしい。何かがおかしい。
近藤は矢央の将来を心配はしている、しかしそれは女子としての心配であって、剣が扱えないことを心配されたことは一度もない。
というか、意外と此所の男達は矢央に甘いのか、誰も男のように武士のように剣を握れとは言ってこない。
護身用に身に付けて損はないからとは言われたが、矢央が戦に巻き込まれることは極力避ける方なのだ。
なのにその筆頭である近藤が、そんな心配の仕方をするのだろうか?
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