駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「おい、こら! ンなとこで何してんだぁ?」
「なっ、永倉君!!」
「は〜い、どうも。 ところで武田さん、あんたこいつに何しようとしてんの?」
矢央の背後に立った永倉は、矢央の前に伸ばした腕をグイッと曲げ、矢央を後ろから抱き込む体勢をとった。
永倉の登場に驚いて口をパクパクさせている武田の手を、パシッと叩く。
武田の魔の手から救い出され、永倉の胸に安堵して背中を預けた。
「いや、いやこれはだね!? 間島君が伊東殿に迷惑をかけたようだったから、私はそう…注意をだね! 注意をしていたんだっ」
冷や汗を流す武田をジトーッと見つめ、嘘が下手すぎる武田を少し心配した。
戦の策を練る奴が、こんなに動揺して大丈夫なのかと。
「ふぅん。 で、その注意は終わったみてぇだな?」
下から見上げてきた矢央を見下ろすと、早くこの状況から逃げたい矢央はコクコクと頷いた。
同様に武田も思いっきり頷いてみせた後 「いいかい! これからは気をつけなさい!」 と、かなり棒読みなりながら焦って走り去って行った。
それを首だけ振り返って見送った永倉は、はあと溜め息をつくと、ふと腕に感じた温もりにハッとし元の位置に顔を戻した。
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