駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「もう大丈夫だ」
永倉の逞しい腕をギュッと掴む小さな手。
安心させようと、空いている手で矢央の頭を撫でる。
「…ありがとう、ございます」
ぶっきらぼうな言い方にも関わらず、永倉の手の優しさは変わることはなかった。
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場所は変わって、永倉は矢央を連れて町へ出る。
あのまま気分の沈んでいる矢央を放置するのもどうかと思ってだ。
「そういやあれだな、最近こうして二人で出歩くことなかったな」
宛があるわけでもなくただ歩くだけの二人は、端から見れば恋仲のように見える。
何故なら、永倉の数歩後ろをちょこちょこと着いて歩く矢央が普段より大人しく、そしてほんのり頬を染めているから。
「永倉さん、飲み行くか仕事してるかですからね」
「あ〜、まあ、それくらいしかする事ねぇし」
「前はよくお部屋で本読んでましたよね」
「読みてぇのがなくなった」
「稽古もあまりしなくなりましたよね」
「朝稽古は毎日してるぜ」
「夕餉にも姿を見せなくなった」
「それは、俺だけじゃねぇだろ」
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