駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
二人の足がピタリと止まる。
どちらかともなく大きな溜め息を吐き、永倉は伸びた前髪をグシャグシャと手ぐしでとかし突然に 「あっ」 と、声を漏らした。
何かと思いそちらに顔を向けた矢央は、一瞬心臓が口から飛び出るかと思った。
永倉の顔が、直ぐ目の前に迫っていたからだ。
「お前、寂しかったのか?」
「は!?」
至って真面目に問う永倉は、矢央が反抗的な時は寂しいか退屈している時だと勝手に決めつけている。
目を泳がす矢央を見て、図星だなとニヤリと口角を上げた永倉は、矢央の頭をグシャグシャとなで回した。
最早癖になりつつあるそれに、違和感を覚えたのは矢央である。
「……っ」
「ほんとガキだなお前はよ! ちぃったぁ大人にならねぇと嫁に行けねぇぞ」
顔が熱く、心臓が痛む。
そして無性に腹が立った。
「お、大きなお世話です! 永倉さんこそ、そのデリカシーのなさ改めないとモテないですよっ」
バシッと弾かれた手をブラブラさせながら、デリカシーとはなんだと首を傾げる永倉。
「今はモテなくてもいいけどよ。 って、言っとくが俺は割りとモテるぞ」
自画自賛する永倉に呆れつつ、ある言葉に引っ掛かった。
"今はモテなくてもいいけどよ"
そういえば、最近永倉には恋仲が出来たと自慢していたなと思い出した。
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