駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
文句があるのか、と問われれば文句はないと首を振った。
「文句じゃなくて……」
「はっきりしねぇ奴だな。 なんだよ?」
焦れた土方は、矢央の前にしゃがみ込み顎を突きだし見下ろした。
ヤクザか、と思うその姿に苦笑いする。
「土方さんって、良くも悪くも目立つんですよねぇ〜」
「は?」
去年の話しになるが、土方と散歩に行った時のことである。
町を歩けば娘達の熱い視線に、矢央は落ち着いて散歩を楽しむどころではなく。
「結局直ぐに帰って来ることになったじゃないですか」
「それは俺のせいじゃねぇだろ」
「ハッハッハッ! 相変わらず歳はモテるなぁ」
「うっせぇ」
と言うわけで、矢央が土方と出掛けるのを避けたいのだ。
「矢央っ」
「はい!」
「醤油買うだけなんだ、さっさと行ってさっさと帰ってくりゃいいんだよ! 行くぞ!」
「は、はい!」
結局は問答無用と着いていくはめになるのだった。
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