駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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「はいっ、醤油やね! まいどおおきに!」
いつも世話になっている顔見知りの店で醤油を買い、重さに顔を歪めると隣からヒョイッと手が伸びてきた。
「ありがとうございます」
「……ふん」
普段は厳しい土方も、こういった時は矢央を女子扱いするのだ。
照れ臭いのか顔を反らし鼻を鳴らす土方は、ふいに視線を感じ振り返った。
それに気付いた矢央も振り返ってみたが、なんだ(?)と首を傾げた後、土方を見上げる。
「土方さん?」
「……気付かれたか」
屯所を出て暫くしてから、後をつけられている気配があった。
わざと気配に気付かせていたのか、ただ尾行が下手なのかは分からないが、先程まであった気配も土方が振り替えれば消えてしまい。
「山崎君」
「は!」
物陰に身を潜めていた山崎に「いたの!?」、と驚く矢央を捨て置き土方は気配があった方を見据えたまま
「後をつけろ」
「御意」
指示を下された山崎の気配も消え、土方はようやく前を向き歩き始めたので、慌てて矢央も歩き始める。
「…お前は、至る所から狙われているみてぇだな」
「え? 私がですか?」
醤油を買いに来たついでに安かった大根を手に入れ、大根を胸に抱えながら矢央はきょとんとする。
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