駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「誰かは知らねぇが、新撰組の外にもお前を付け狙う輩がいやがる」


矢央にとってその相手が敵か味方かは分からないが、新撰組にとっては確実に敵だろうと土方は判断している。

自分に対して敵対心を剥き出しにした殺気がその証拠だ。


「そういやぁ…お前は坂本龍馬や岡田以蔵。 長州の奴らにも関わってたみてぇだし?」

「ううっ!」


グサッと、心臓を抉る土方の鋭い指摘。

大根を強く抱き締める矢央に、土方は小さく息を吐き言葉を続ける。


「お前が奴らと繋がり、新撰組に何かしようとしている…なんざ疑っちゃあいねぇよ。 もしそんな器用さがお前にあるなら、救護隊じゃなく観察方に置く」


土方の言葉には裏はなかった。

正直、矢央が不器用すぎて扱いに困る時があるくらいなのだから、矢央に裏切り行為が出来るなんて到底思えない。


「だが、お前を利用して俺達をどうにかしようと企む輩がいても可笑しなことはねぇだろ」

「私を利用、して? そんなこと…」


どうやって己を利用しようと言うのだろうか?

疑問符を浮かべながら川沿いを歩いていると、ふとあることを思い出した。


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