駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
死を救えなかった"大切な人"が、矢央の脳裏に三人浮かんだ。
芹沢も山南も以蔵も、このような時代でなければ生きていられたはずだ。
仲間が仲間を、死に追い詰めた。
「悪いとは言わねぇさ。 肩書きだけで付き合ってるわけじゃねぇんだからよ」
「でも、皆が仲良くは出来ない」
「ああ、そうだ。 お前が新撰組の敵の中に友だと言える奴がいようが構わねぇさ、けれど敵である以上、いつかは戦う時がやって来る」
矢央に語りかけながらも、土方は違う方向へと身体を向け、ゆらゆらと風に揺れる柳の葉に鋭い目を向けていた。
「だが、俺もむやみやたらに血を流してぇわけでもねぇのさ。 それはあんたも同じじゃねぇのか?」
「……さすがは、新撰組鬼の副長様ぜよ。 おんしなら、少しは話ができそうじゃき」
「坂本さんっ!?」
「しーっぜよ! 隠れとる意味がないきっ!」
矢央が指を指し声を上げると、龍馬は首を左右に振り慌てて人差し指を口元へと運んだ。
そして、不味いと此方も慌てる矢央に走り寄ると、龍馬は隣に立つ土方を見上げニヤリと笑った。
「着いてくるぜよ!」
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