駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

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無造作に結われた髪が風に揺られ、坂本は僅かに目を細めた。

伸びた髭をさすりなが、何から話すべきかと考えた結果……


「はっきりと言っておくが、わしは幕府側の考えには賛同できん。 従って、おんし等とは敵以外のなにもんでもないぜよ。
しかし、それでもわしは矢央を友だと思うちょるき、だからこそこの話をしに来たぜよ」


仲間と言わず、友だと言う龍馬。

それは決して仲間にはなることは出来ないという意味を込めてで、しかし矢央とは敵になりたくないという意味を込めて友だと言った。


「長州の桂さんは、新撰組に間者を送りこんじょる」

「ン…だとっ」

「だがそれは、新撰組を探るためのもんやないきに。 桂さんが狙っちょるのは……矢央、おまんじゃ」

「え?」



龍馬は、驚く矢央を真っ直ぐ見つめた。

矢央の肩に両手を置いて、同じ目線になるまで身を屈める。


「熊木という名の男がおるじゃろ。 そいつは、おまんとは違うがまた不思議な力を持つ男らしくてな、桂さんはえらい信用しちょるぜよ」

「熊木さんが、長州の…桂さんが送り込んだ間者なんですか?」


頷く龍馬の隣では、土方が難しい表情で考え込んでいた。

怪しいと報告は受けていたが、観察に優れた山崎ですら熊木を探るのは困難で、その熊木が狙うのは新撰組ではなく矢央だというのは、どんな理由があるのか。


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