駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

第三話*夏の終わり


この日は寝苦しい夜で、矢央は何度目になるか分からない寝返りをうった。

夏の暑さには慣れないものの、夜になると幾分涼しくなるので、割りとぐっすり眠れるのだが。


「…あぁ〜ッッ! やっぱり眠れない!」

バサッと薄い掛け布団を払いのけ、勢いよく起き上がった。


「………」

最近寝不足だ。
その理由も、薄々気づいている。

矢央自身の感情の整理がつかず、上手く自分をコントロールできないからだ。


「これが沖田さんの言う恋だとしたら…私…」


いやいや。
それはない、と頭を振るう。

あの人の事を考えると、やたらと胸が疼き、それはドキドキというより靄がかかった感じで

なんとも気持ち悪いものだ。


「ちょっと散歩しよ」


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