駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

もう昼近くになる頃にして、ようやく矢央は目を覚ました。


うっすらと瞼を持ち上げると、眩しい光に目が眩む。

どうやら戸が開いているのか、日射しが部屋に射し込んでいるようだ。


「……ん…」

「お寝坊さん。 おはようございますって言っても、もうお昼ですけどね」


クスクスと笑うのは沖田で、矢央が眠る部屋は日中日射しがよく当り暑くなるので、風を通してあげようと戸を開けにやってきた。


陽が上りだしてから部屋にいた沖田は、矢央が起きるまでに読んだ本は二冊目に入ろうとしている。


「あれ? 沖田…さん?」

「よく寝てましたね。 昨晩は、寝付けなかったかな?」


矢央の様子の変化に敏感な沖田には、彼女が何かしら悩んでいることは分かっていた。

その一つは、己のせいでもあるだろうと。


「……ん、わっ!? 私、食事の支度がっ」


ぼーっと、沖田を見つめていたが、ハッと目覚めた矢央は飛び起きる。

急いで布団を畳む矢央を、楽しそうに笑いながら手伝う沖田。

「急がなくて大丈夫ですよぉ。
もう終わってますから!」

「ええ!? 食べ損ねたっ!」

「…って、重要なとこはそこですか」


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