駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

***

寝坊した矢央は、沖田が取っておいてくれた食事を軽く済ませると、いつも通り屯所内の掃除をしていた。


箒で庭の掃除をしている傍では、沖田がその風景を眺めている。


「沖田さん、今日は調子良いんですか?」

「はい。 咳もあまり出ないし、今日は調子が良いですよ」


にこっと微笑まれ、ホッと安心する。

沖田の調子が良いと、こちらも元気でいられると、矢央はまた掃除にとりかかった。


「そういえば、今日はお祭りがあるみたいですよ」

「お祭り!?」


なんとなく言ってみた発言だったが、矢央には好奇心を煽る言葉だったらしく、箒を投げ出し沖田の隣に座り込む。

見事に宙を舞って落ちた箒を苦笑いで見た沖田は、直ぐ隣で瞳をキラキラと輝かせる矢央が子犬のように思えた。


(尻尾を振って喜ぶわんこですねぇ)


「大きくはないみたいですけど、島原の近くの通りでやるみたいです」

朝の巡察隊が、町人達が忙しなく準備していた様子を見かけたと話していた。


「いいなぁ! お祭りかぁ」


行きたい。
ものすごく行きたい、が、あまり目立った行動を避けたい今、土方から了承を得るのは難しそうだと唸る。


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