駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「…なんか腹立つなぁ」

「ん? どうした平助?」


一休みのため入った店の前で酒を飲み、店先の金魚すくいで対決中の矢央と原田を眺めながら溜め息をつく藤堂。

細かい作業が得意な矢央は意外と金魚すくいが得意のようで、大きな体を無駄に動かし一匹もすくえていない原田を慰める。


「前から思ってたけど、新八さんは良いとこ取りするの上手いよねぇ」

「上手いってなんじゃそれ…」

「矢央ちゃんと上手くいってないと思ったら、今回みたいに一瞬で喜ばせちゃうんだからさ。
 ほんと、いつもそうだ…」


的当てへと対決を移した矢央達を切なげに見つめる藤堂。


「経験値の違いだろ」

「はあああ…」


あっさり言われると、更に落ち込む。


「お前は遠慮しすぎなんだよ」

「遠慮?」


藤堂の恋心を知っている永倉は、もう少しがっついてもいいのでは思うとこがあった。


好きすぎておいそれと手が出せないの分かる。
が、直球派の永倉にはそれが、ただの逃げではないかと思うのだ。


「いつまでもこのままお子様な行動をしてたんじゃ、いつ誰にあいつを奪われても文句言えねぇだろ」

「…それって、誰のこと言ってる?」


矢央がこちらに手を振る。
笑顔で手を振り返す藤堂の心の中は冷ややかだ。


「…さあな」

「永倉さんも平助さんも、一緒に遊ぼうよ!」

「矢央ぉぉ!! 勝負はまだこれからだぞ!!」


祭はまだ序盤、夜はまだ始まったばかりだ _____________



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