駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
一通り祭屋台も見て回った。
少し足を休めようと立ち寄ったのは永倉達馴染みの店。

店の二階の窓から外を眺める矢央の口許は緩む。


「いや~遊んだ遊んだ! 体休めときたら酒だろ!」

「失礼しますぅ。お酒お持ちしましたえ」

「おお!待ってました!!」


運ばれてきた酒を豪快に飲み始めた原田。
所帯を持ち少しは落ち着くと思ったが、相変わらずだ。

だが、そんな原田を見ていると変わらないでいてくれることにホッとする。


「ところで最近変わったことはねぇか?」


突然問われた矢央は、頭を傾げた。


新撰組が名を広げるに連れ問題も増えていくが、矢央に関わる問題も消えることはなく。


「…特にないです、よ?」

「そうかい」


今のところ、矢央自身危機迫る感じはなっかた。

しかし、以前のことがあるためおちおち安堵してもいられない。


「熊木、長州…矢央。いってぇこれから何がおこんのかねぇ」


くいっと、猪口を口に運ぶ。


「ごめんなさい、また心配かけ…」
「やーめーれ!」
「っうご!」


謝りかけた矢央の口を塞いだ藤堂の目は僅かに吊り上がり、少し怒っているように見える。

が、次の瞬間には、にかっと少年のような笑みを浮かべていた。


「謝る意味ないじゃん。僕ら迷惑だと思ってないし」


くしゃりと、頭を撫でられる。


「だな!平助もたまには良いこと言じゃねぇか」
「たまに、が余計だよっ!」
「だはははははは!」


胸が熱い。
目元が熱くなるのを誤魔化すように前髪をとかし顔を隠した。 




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