駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
夜も更けはじめ祭も終わり、矢央は屯所に向かって歩いていた。
空は夏の星座がはっきりと輝き、月明かりと共に帰り道を照らしてくれる。
「もうすぐ秋だね」
夜風に僅かに混ざる秋の香りに、藤堂は目を細める。
「うん。秋がきて、あっという間に冬がくるね」
「秋になったら、また焼き芋焼いて食べよう? 去年と変わらずさ」
「うん」
永倉が気を利かせたのか、原田と二人かなり足早に先を行く。
はあ、わざとらし。
とは思いながらも、絶好の機会とばかりに矢央の横顔を見た。
いつもと違う女子の姿をした彼女に、そわそわと落ち着かなくなる。
いつかばっさり切ってしまった長く黄金色した髪も、月日が経ち茶色くなり僅かに肩にかかる程まで伸びている。
そのせいか幼く見えるが、
「矢央ちゃん、いくつになったんだっけ?」
「えっと、十八ですね」
十五の時にこの時代にやってきた、あれから長い月日が経ち。
普通なら高校を卒業する年か、と、思いにふける。
「そっか~っ! 大人になったね」
藤堂が初めて矢央に会った時は、置かれた状況が分からず常に不安そうにしていた少女。
一つ一つ問題を解決してきながら、少しずつ成長していった。
そんな矢央は、今では女を隠すのが難しくなりつつある。
「矢央ちゃんはさ、普通の女子として生きたいとは思はない?」
「ふふ。突然どうしたの?」
「いや、普通にさ…恋をして、家庭を持って子供を産んで…てさ」
苦笑いを浮かべる藤堂は、きっと我ながらあからさまな質問だなと照れているようだ。
頭一つ分高い藤堂を見上げ、表情を曇らせた矢央。
「平助さんは、私にそうゆう女になってほしいですか?」