駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
支度が調いお膳を運ぶ。
なんだがいつもより息が上がって、広間につくとうっすら汗も浮かんでいた。
「うーん」
やっぱり薄くないかな?
お雪には合格点をもらった味噌汁だったが、矢央は納得いかない。
どう考えても薄いじゃないか。
「さっきから、どうしたんだ?」
眉間に皺を寄せ、どうにも不味そうに味噌汁をすする矢央に原田は尋ねる。
「味噌汁、薄くないですか?」
「いや、うめぇぞ」
あっさり答えられてしまう。
しかも嘘のない原田に言われると、ちょっと嬉しいものだ。
「なにこれ、お前が作ったのか?」
原田の隣で、味噌汁をすする永倉は「うまいな」と、呟くが、矢央には聞こえていないのか、今だに難しい表情のまま。
「お雪ちゃんに、教わったんです。
ついでに、その魚も焼きました」
「…焦げている」
「斉藤さん、お残しはダメですよ」
「……」
焦げた魚の尻尾を箸でつまみ上げ、珍しか表情を歪める斉藤は、相当食べたくないのだろう。
原田や藤堂に至っては全く気にする様子もないが。
「ごちそうさまでした」
「なんだほとんど食べてねぇじゃねぇか?」
原田は心配しているつもりらしいが、既に箸が矢央の膳に伸びているのは、どう受け取ればいいのだろうか?