駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


そよそよと心地良い風が髪を揺らした。


人の話し声がし、重い瞼を上げると見慣れた部屋の天井が視界に入る。


「矢央ちゃん! 山崎さん、矢央ちゃん目を覚ましたよ!」

「ん…あれ?」


さっきまでお雪と庭で洗濯物を干していたはずなのに
どうして布団の中にいるのだろうか。


「熱中症や」

「ねっちゅ…」


口を開きかけて、また眩暈に最後まで言えなかった。


「秋になったとはいえ、まだ暑いからな」

「それと、お前の場合体を締め付けとるからな」

「締め付け?」


額に乗せられた手拭を水の入った桶に浸し
もう一度熱をもった額に戻す。


「女を隠すために晒をまいてるからだろ」

「そうゆうことです」

「え?え?」


藤堂には意味が理解出来ず、向かい側にいる山崎と永倉を交互に見やる。


(そういえばきつくない?)


疑問に思い目線を下げると、


「晒は取った。
 今は見張りをつけるさかいに、安心せい」

「ああ、そうで…って、誰が?」


いつもは晒で押しつぶしていた胸に窮屈さがなく
そのおかげで暑苦しさも和らいだが…


「ん?」


ぎこちない動きで、にやりと口角を上げた山崎を見ると。



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