駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
目を開けると、真っ暗な中に一人ポツンと佇む矢央がいた。
何も見えない、本物の闇。
なのに何故か自分のことははっきりと見えている。
ゆっくりと両手を上げてみると、体がやけに重くて違和感を感じた。
ーーーああ、これは夢なのか。
暫く見ていなかった夢を、久しぶりに見ているのだ。
でも、何故?
疑問に思いながらも、一歩、また一歩と足を進めてみると、そのたびにピチャンピチャンと水の音がする。
それでも足下に水の感覚なんてなく、次第に不安が積った。
此処は何処なの?
夢の中……でも、その夢を見せていた人物はもういないはず。
一体なにが、と思ったその時だった。
『逃げて!』
懐かしい声と共に、矢央の体は闇に呑まれていったーーーーーー