駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

目を開けると、真っ暗な中に一人ポツンと佇む矢央がいた。


何も見えない、本物の闇。


なのに何故か自分のことははっきりと見えている。



ゆっくりと両手を上げてみると、体がやけに重くて違和感を感じた。


ーーーああ、これは夢なのか。


暫く見ていなかった夢を、久しぶりに見ているのだ。


でも、何故?


疑問に思いながらも、一歩、また一歩と足を進めてみると、そのたびにピチャンピチャンと水の音がする。


それでも足下に水の感覚なんてなく、次第に不安が積った。


此処は何処なの?

夢の中……でも、その夢を見せていた人物はもういないはず。



一体なにが、と思ったその時だった。









『逃げて!』





懐かしい声と共に、矢央の体は闇に呑まれていったーーーーーー
< 264 / 640 >

この作品をシェア

pagetop