駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第五話*狙われた赤石
緊迫感の漂う空間。
土方、永倉、藤堂、沖田、皆刀を抜き熊木を囲んでいる。
「はあ…とんだ邪魔が入ってしまった。 副長お久しぶりです」
熊木は溜め息をつくと、何を考えているか分からない発言をする。
新撰組を脱走しておいて、
「なにが久しぶり、だ。 てめぇ、覚悟できてんだろぉな?」
「覚悟…ですか? そんなもの、端から持ち合わせていませんよ?」
「ああ?」
「だって、死ぬ気ないですから」
誰のか分からない刀を握る音がすると同時に、永倉、藤堂、沖田が熊木目掛けて刀を振りかざした。
「たまお会いしましょう? 間島さん」
ーーーーヒュンッ!!
三者が振り下ろした刀は、互いの刀に擦れ音を立てた。
そして、熊木がいたはずの場所には三つに斬れた蝶の亡骸が落ちている。
「…………」
熊木は、一瞬にして消えたのだった。
「忍びがよ、あいつは…」
土方はグッと奥歯を噛み締めて、足下で未だに震えたままの矢央を見た。