駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

土方達が場所を移したその時、離れた場所からその様子を伺っていたのは伊東。


チラリと消え行く土方達を見送ったあと、一人静かに屯所を出て行った。


月明かりもなく薄暗い外で、とある人物を見つけた伊東はクスッと笑みを浮かべた。


「やはり戻ってきましたね。 貴方の目的はあの子だったのですか」


「伊東さん、ですか。 覗き見とは趣味の悪い」


「いえいえわざとではありませんよ? 何やら騒いでいるようでしたのでね?」


袖から扇子を取りだしペシペシと顎を軽く叩く。


ーーーーさて、どうしたものか。


「何やら面白いことを企んでおられる」


すーっと細められた双眼は、伊東ではなく闇夜を見つめ続ける。


「邪魔立てしないで頂きたい」

「邪魔なんてしませんよ。 貴方を敵に回すのは得策とは思えないでしょう」

「必要なんです。 目的のためには、力がね」


ーーーーこの男、使える。


伊東も、そして熊木も互いに思想を読まれぬように警戒するが、先に手を打ったのは熊木だった。













「伊東さん、手を組みませんか?」



< 271 / 640 >

この作品をシェア

pagetop