駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
土方達が場所を移したその時、離れた場所からその様子を伺っていたのは伊東。
チラリと消え行く土方達を見送ったあと、一人静かに屯所を出て行った。
月明かりもなく薄暗い外で、とある人物を見つけた伊東はクスッと笑みを浮かべた。
「やはり戻ってきましたね。 貴方の目的はあの子だったのですか」
「伊東さん、ですか。 覗き見とは趣味の悪い」
「いえいえわざとではありませんよ? 何やら騒いでいるようでしたのでね?」
袖から扇子を取りだしペシペシと顎を軽く叩く。
ーーーーさて、どうしたものか。
「何やら面白いことを企んでおられる」
すーっと細められた双眼は、伊東ではなく闇夜を見つめ続ける。
「邪魔立てしないで頂きたい」
「邪魔なんてしませんよ。 貴方を敵に回すのは得策とは思えないでしょう」
「必要なんです。 目的のためには、力がね」
ーーーーこの男、使える。
伊東も、そして熊木も互いに思想を読まれぬように警戒するが、先に手を打ったのは熊木だった。
「伊東さん、手を組みませんか?」