駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

茂の小さな手を握り、儚げに微笑む矢央。


「もしもですよ?」

「ん?」


大きな瞳で見上げられた原田は、きょとんとその瞳を見つめた。


「もし、あたしと原田さんが恋して結婚していたら、おまささんや茂ちゃんはこの場にいなかったことになるんですよ」

「うっそれは…」


茂を抱き締め、茂がいない未来を考えると胸が締め付けられた原田は小さく息を吐いた。


矢央の言いたいことは分かる。
分かるが、ならばこの女性の未来は暗いばかりじゃないかと心配してしまう。


「原田さんは、おまささんと茂ちゃんの幸せだけ考えてあげてればいいんです! あたしは
大丈夫ですよ!」


「矢央、お前…」









ーーーーあー、暇です。


昼過ぎ辺りからちらちらと降り始めた雪を眺めながら、屯所の中は静かだなと耳を澄ませるのは沖田。


「総司、今日は体調はいいのか?」


「嫌ですね。 別に重病人じゃないですよ私は」


「………」


「ねぇ土方さん」


「あ?」


「来年はどうなりますかねぇ、私たちは」


「……なるようになる、しかねぇだろ」


「そうですねぇ」


暮れだというのに、相変わらず仕事ばかりの土方と近藤。

そして、あまり仕事を振られなくなった己。

考える時間をあまり与えないでほしいのに、沖田には余す程に時間があって、考えたくないことばかりが頭を過る。


「矢央さん、早く帰ってこないかなー」



しんしんと雪は降るーーーー


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