駆け抜けた少女ー二幕ー【完】




ーーーこりゃ、積もるな。


頭上を見上げれば、灰色の空からゆらりゆらりと白い物体が降り注ぐ。

目を僅かに細め、ぼんやりとそんなことを考えていた永倉は本日巡察組である。


「暮れくらい仕事したくねー、酒飲みてー」


口を開けば愚痴ばかり。


「永倉先生! そろそろ…」


「ん? もうそんな時間か。 よっしゃ、今年最後の仕事も終わりだ終わり! てめぇらもさっさと帰って暮れの支度しな!」


一通り見回ったあと現地解散しようと、巡察前に永倉は思っていた。

そのまま島原にでも行ってお気に入りの芸妓の顔を見ながら酒を呑む魂胆である。


「良い年を~」

なんて柄にもなく去る隊士たちの背に向かって手をひらひらと振ってから、永倉はそうだとある場所に足を向けた。



「どうせあいつ今日は顔を出さねぇだろうから、俺様がわざわざ暮れの挨拶しに行ってやろかな」


うーさぶ。 と、ぶるっと身体を揺すり袖に腕を引っ込めた。



永倉が向かった先は原田の家で、近くまでやって来て歩みをピタリと止めた。


庭先に見知った顔があり、それが矢央だと分かり唇をんーっと硬く結ぶ。


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