駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
其の四

第一話*夢と、彼



年が明け、慶応三年一月。


「また一つ歳をとったわけかぁ」


此方に来てから一応は歳はとるみたいだが、見た目に関しては髪が伸びたくらいの変化しかない。

周りを見れば初めて出会った時より少し歳をとったように見えるのに、矢央だけは歳をとらなかった。


「これもお華さん効果なのかな?」


掃除の合間に休憩と言う名のサボり中の矢央は、ブツブツ言いながらすっかり雪の積もってしまった庭を眺めている。


年が明けてから起こった事はこれと言ってないが、つい先日伊藤が数人の隊士を引き連れ九州へ旅立ったと聞いている矢央は、だから最近土方の機嫌が良いのかもしれないと思った。



「だけどやっぱり平助さんは元気ないんだよね」


年明け辺りから藤堂は前にもまして伊藤と行動を共にする姿が目立っていて、近藤一派というより今では伊藤一派という感じだ。


「はあ、ねぇお華さんこれからどうなっちゃうのかなー」


熊木に襲われた夜に見たあの夢は間違いなくお華の力によるものだと思う。

成仏したはずのお華がまた矢央に何かを知らせようとしているのか。



「はあ…」


不思議な事ばかり体験してきた矢央も流石に参ってしまいそうで、思いの外溜め息が大きかった。


そこへ足音が近付いてくるのに気付き、そちらに顔を向ける。


< 289 / 640 >

この作品をシェア

pagetop