駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
最近はお互いに避けていた。
別に何があるわけではないはずなのに、身体は正直で互いを見つけると自然と反対方向へと足を進めていたり。
だから、本当に久しぶりなのだ。
二人がこんな穏やか空気の中を過ごすのは。
「すっかり寂しくなったな。 昔は矢央の周りに皆勝手に集まってたのによ」
「そうですね。 そんな昔でもないのに懐かしいです」
最初は矢央を一人にしないためだった。
それがいつしか矢央に惹かれて皆が集まる。 矢央の周りはいつも騒がしく賑やかだったのに、いつからかそれもなくなっていった。
「まあ、仕方ねぇわな。 近藤さんも土方さんも忙しそうだし、総司は無理できねぇみたいだし」
「山崎さんも斎藤さんも忙しそうですよ。 あ、あと原田さんはラブラブ中ですからねー」
「らぶらぶ? お前、時々意味分からんこと言うな。まあ左之は惚けてるから仕方ねぇ」
「あ、この前茂ちゃんと遊んできました!」
団子を頬張り数週間前のことを話すと、永倉はあの時かと思い出す。
矢央が原田の子を抱いて笑っている姿は、どこから見ても親子のように見えた。
「お前にも母性があったのか。 何かにつけガキに会いたがるって左之が言ってたぞ」
「だって可愛いもん」
ぷくっと頬を膨らませると、そこをツンツンと指でつつかれ唖然とする。
「お前も可愛い」
「………」
目が点だ。
とうに頬の膨らみは彼の指によってなくなっているのに、何を思ってか永倉は未だに矢央の頬をつつくのを止めない。
かああっと、また頬に熱が宿る。
ーーーなななななにっ!?
永倉の行動言動の意図するとこが分からす困惑していると、やっと手が離れていった。
ほっと胸を撫で下ろす。
「永倉さん、変な物拾って食べませんでしたか?」
「俺は犬か」
「…だって、なんか変だよ……」
自分にだけ聞こえる程度に発した声のつもりだったが、永倉にはしっかり聞こえていたらしくにやりと口角を上げている。
沖田や藤堂はしないその色気のある笑みに、思わず視線を反らした。