駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「新撰組だ! お前たち何をしている?」
新撰組と聞いて慌てた男の先には、涙を浮かべた女性が身体を震わせて矢央を見つめた。
男の数は四人。
薄汚い服に無精髭、あからさまに怪しい。
「お嬢さん助けはいりますか?」
見れば分かるのだが、一応尋ねた藤堂に女性は小さく頷いた。
すると隊士たちに目で合図して、男たちを取り囲む。
「矢央ちゃんは、彼女と隠れてて」
「はいっ」
矢央は男たちを避け遠回りして女性の背後に回り込むと、怯える女性の手を強く掴んだ。
「もう大丈夫ですからこちらへ」
「へ、へぇ。 貴方は新撰組の隊士はん?」
まだ震える身体をそっと撫でてやると、目線の変わらない女性は矢央を見つめ僅かに頬を染めた。
「はい。 間島と言います。隊士と言っても、救護する方なので戦闘は彼らに任せてれば安心ですよ!」
「はあ、貴方が噂の…。 そうでしたか、ありがとおございますぅ」
京の独特な鈍りは嫌いじゃない。
友達の雪を思い出して、彼女がこんな目に合ったらと許せなくなって女性を抱く腕に更に力が入る。
すると更に女性が顔を赤らめているなど、矢央は知るよしもない。
最近は外出を控えている矢央だが、男装した姿は幼いながらに美男子と評判で、人懐っこい笑みのおかげで意外と人気があったりするのだが、それも矢央だけは知らなかったりする。
「しまったっ!! 一人取り逃がしたっ、追え追えって、君が追っていくなーっ!!」
藤堂や隊士が男たちを倒していくのを見ていた矢央は、一人の男の怪しい動きに気が付いた。