駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「う〜ん! やっぱり外はいいですね〜」
久々に外出した沖田は着流し姿に武士の命ともいえる刀をささずにいた。
刀を持たなくて良かったのかと聞く矢央に、沖田は 「今日は遊びに出たんで荷物になるだけ」 と武士が口にしてはならない言葉で矢央を驚かせた。
「それで、いったい何処に行くんですか?」
沖田の隣に並び、散歩しているだけに見える沖田を見上げる。
「あ〜それはですねぇ……。 矢央さんこっち!」
「どわっ!?」
突然腕を引かれ路地に連れ込まれた矢央は、思いっきり壁に顔をぶつける。
沖田の力加減はどうなってるんだ、と鼻をさすりながら背中に視線を送った。
「ほらほら、あれを見て下さい」
手招きをされた矢央は背を屈めている沖田の背後から、外の様子を覗き見た。
禁門の変以来外悲惨な状態だった京街は、今も復興に向け大忙しだ。
そんな慌ただしく働く街人たちのなかに、沖田も矢央もよく知る人物の姿を見つけた。
「あれ、原田さん今日は巡察じゃなかったんだ?」
朝餉の後、姿を消した原田。
てっきり巡察に出ていると思っていた原田だったが、彼は軽装でどう見てもプライベートで外出しているようだ。
さてそんな原田を見かけたところで、沖田が何故こんなにも楽しそうなのか。
「はら……ぐむっ?」
「あーっ! 駄目ですよ! 声をかけるなんて野暮なことはしちゃ駄目なんです〜」
声をかけようとした矢央の口を塞いだ沖田。
なんで(?)となる矢央は、もう一度原田を見てみると、カッと目を見開いた。