駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


場所を移して土方の部屋に幹部数名が集まっている。


「矢央さんの傷は深くなかったので、完治すれば歩くことは何ら問題なさそうです」


最後に部屋にやってきた沖田はそう言うと、あからさまに皆ほっと息をついた。


沖田は藤堂の隣に腰を下ろすと肩を叩き「良かったですね」と、低く声を発する。

それで沖田が少し怒っていることが分かり、膝の上で握られた拳に力が入った。



「それで藤堂、間島に何があった?」


土方の鋭い視線に真っ直ぐそれを見れなくて、畳をじっと見つめる。


しかし黙っていても埒があかないことも分かっているので、一つ息を吐くと話始めた。














「つまり、矢央は斬ったんだな。 そして、殺しちまった」


重かった。 土方の言葉一つ一つが重く、真実に胸が押し潰されそうだった。



「…すみませんでした。 僕が着いていながらっ」

「平助、それは違う。 矢央は自ら奴を追ったんだ。なんでそういうことになったかまで、その場にいなかったお前に全ての責任があるとは思えねぇ。 なあ、そうだろ局長」


そこでわざと局長と強調したのは、これ以上藤堂を追い詰めるなと意を込めて。


しかし今の藤堂には永倉の言葉を素直に受け取れる余裕はない。

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