駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「お前がそんなことを言うのは、近藤さんの発言のせいか」


"矢央君を救護隊としてではない隊士として扱う"


あの言葉は皆に衝撃を与えた。

矢央に刀を持たせるということだろう。



「さすがの私も近藤さんには参りましたよ。 でも今の私は彼の力になりたくともなれないから、言い返す権利もない」


矢央に刀は似合わない。

矢央には、ただ隣で笑っていてほしいだけ。


いつでも『おかえりなさい』と、暖かく出迎えてほしいだけなのだ。



「いざと言う時は、こいつを逃がす」

「え?」

「俺は女に刀を握らせる気はねぇからな。 何があろうと、その時はこいつを新撰組から逃がすぞ」



永倉の強い意思は変わらないのだろう。

いつだって矢央を一番女性として扱っていたのは間違いなく永倉だ。

新撰組を脱することが、どうなることか分かっていて逃がすと断言したのだから。



「ま、この件に関しては土方さんも考えてると思うぜ? 何気に矢央を可愛がってんじゃねぇか」

「ああ、そうですね。 土方さんも素直じゃないですから、貴方同様に」

「それ本人前にして言えよ」

「嫌ですよ。 今以上に苦い薬飲まされちゃたまりませんから」


いーっと、歯を見えて抗議する沖田を微笑ましく見ると、ふと藤堂の顔が過った。


沖田や永倉以上に矢央に執着する藤堂は、この先どんな道を決断するのかと。


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