駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
あの時とは違う。
もう幾度となく迷ってきた矢央は、もう迷うことはない。
ただ一つの想いがあるから。
「あの時、これからどんなに辛いことが起きても私は彼らを見守るって決めました。 彼らが安心して帰ってこられる場所を私は守りたい」
そう、その想いは決して揺るがない。
*
「矢央さん!?」
「矢央っ、起きろ!」
「………っん」
眼を覚ますと、矢央を覗き込む二つの顔。
沖田と永倉は心配そうに頼りなく開いた瞳を見つめていたが、二人の顔がはっきり分かると矢央はふわりと微笑んだ。
「矢央さん?」
どうしたんだ、と更に不安になる。
「やっとお華さんに会えましたよ」
「お、華にですか?」
「うん。 顔は見れなかったけど、少し話せた」
「なにを話したんだ?」
起き上がろうとする矢央を手伝いながら、熱でもあるのか少し赤い頬に触れる永倉。
やはり熱があるのか、その頬は熱くて切なくなる。
「熊木さんの狙いは、やっぱり赤石と、その赤石を使えるらしい私みたいです」
「目的は?」
ふるふると首を左右に振る。
それ以上は分からないままだけど、少なからず赤石が必要なうちは矢央の命は保障されたのだろうと思うべきだ。