駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「矢央さん、その大丈夫ですか?」
沖田は矢央の小さな手を取った。
自分の手の中にすっぽりと収まってしまう小さな手。
「…あの人は死んだんですよね」
「ああ」
隠しても仕方ないと思い永倉は頷いた。
泣き出すだろうか、と二人に見つめられていた矢央だったが意外なことに冷静だった。
自分でも驚いている。
「そうですか。 酷いことしちゃったなぁ。 殺さず捕まえれるはずだったのに」
「矢央さん」
手を握る力が増し、矢央はゆっくり沖田を見上げた。
「あの時、浪士の身体も私の身体も熊木さんに操られた」
身体の力が抜け落ち、自分の意思とは関係なく身体が動いた。
そして、気付けば肉を裂くあの嫌な感覚に襲われた。
「熊木さんは危険すぎます。 あんな力、悪い方に使われたら…」
そう思うと冷静を保てた。
熊木の力を知り、操られ人を殺めてしまったことを悔やみはしても恐怖はない。
あの時と同じだ、芹沢を斬った時と。
「やはり、お華と同じような力を持っているんですね」
「お華さんの場合は私に取り憑いたって感じだと思うんですけど、熊木さんの場合は本当に操ってる感じです。 自分の意識もはっきりしてたし」
「もしかして、あの浪士は熊木に操られて?」
永倉の問いに小さく頷いた矢央は、沖田の手をやんわりと離させる。