駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「大人しく飲まねぇと、口移しで飲ませるがいいか?」
「……へ?」
至極真面目に言う永倉は、手に持った薬を今にも口に含もうとしている。
本当にやろうとしているのか?
沖田を見れば、矢央の視線を感じて視線を下げてまた微笑んでいる。
冗談なんだろうか?
二人の考えが全く読めない。
「さあどうする? 口移しがいいか?」
また永倉を見れば、ニヤリと口角を上げた。
駄目だ。本気か冗談か考えている間に、永倉なら戸惑いもなくやってのけそうで、此処は大人しく言うことを聞くのが利口なのではないか。
「の、飲みます」
「ん? 口移しで?」
ちょっとしつこい永倉に嫌味を込めて睨んでやると、やっと冗談だと笑って薬を渡してくる。
「永倉さんが嫌なら、私でも良かったのに」
「…二人とも、今日はなんか変です」
身の危険を感じた矢央は一気に薬を飲み、その苦さに舌を出した。
そしてガバッと布団勢いよくかぶり直し、二人を交互に見る。
「冗談だ」
「冗談ですよ」
声を揃えた二人だったけど、その表情を見る限りどうしても冗談には思えない矢央だった。