駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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「平助さんっ! 平助さんっ!」
伊東が屯所を出て行くと聞いたのは今朝のことで、伊東がいなくなることには大して驚きにはしなかった。
しかし、伊東と共に出て行くメンバーの中に見知った名前があると分かると慌てずにはいられなかった。
朝食もそこそこに矢央は、昨晩から姿の見えない藤堂を探すため屯所内を走り回る。
そしてようやく見つけたのは屯所の中で唯一桜の木がある場所で、まだ桜の蕾しかない状態の木を近くの階段に座って見ていた。
藤堂は矢央の慌てた息遣いに苦笑いを見せた。
「探してくれてたの?」
「平助さんっ、なんでっ?」
一瞬見開かれた双眼も、すぐさままた桜の木へと移る。
「どうして新撰組を辞めるんですかっ?」
藤堂は何も言わない。
「どうして離れるんですかっ?」
此方を見ようとしない藤堂に焦れ、矢央は藤堂の隣に移動に無理矢理此方を向かせようと肩を掴んだ。
そしてようやく藤堂は矢央を見て口を開いた。
「どうしてなんて理由は簡単なんだよ」
「簡単?」
「此処にはいたくないからだろ」
「え? なんで?」
どうしてそんな悲しいことを藤堂が言うのか分からない。