駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
ツーッと頬に涙が伝う。
幸せにすると言うなら、どうして貴方は別の道を歩むのだろうか。
「駄目…だよ。 私は此処にいたいっ」
溢れて止まらない涙を、藤堂は震える指で掬った。
ドクンドクンと鼓膜に直接煩く響く鼓動。
玉砕覚悟だった。
初めから分かっていた彼女の気持ち。
多分どんなに想っても、自分に向くことはないと。
「平助さんもっ、行かないでよぉっ。 一緒にいたいよっ別れたくないっ!」
涙と共に溢れる言葉。
純粋だからこそ酷い言葉だ。
「無理に決まってるだろ」
突き放すかのように低い声にズキンと胸が痛みを増す。
簡単なようで簡単じゃない。
お互いに一緒にいたいだけなのに、少しの気持ちのスレ違いから相容れない。
「僕のこと嫌い?」
「…嫌い…じゃないっ」
「でも、男としては見れないんだよね」
「ごめん、なさいっ」
ーーー謝るなよ。止められなくなるから。
座っていたはずの体勢から、床に背を預ける体勢に変わったことに気付いたのは背中に感じる痛みのせい。
そして唇に押しあてられている感触に、悲しいくらい胸を熱くした。
「…んっ…」
両腕を拘束され身動きがとれない矢央は、嫌だと頭を振るうが、逃がさないとばかりに更に深くなる口付け。
「…んやっ…へ…すけっ…さ…」
「…これで男として見てくれる?」