駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
声もなく泣いた。
ただただ泣いた。
こんな最悪で悲しい別れなんてないだろうと。
「平助さんっ…いっちゃいやだよっ…」
もう二度と、あの優しい笑顔で矢央ちゃんと名前を呼んでくれないのだろうか。
それとも待っていれば、またいつか笑顔で会える日が来るのだろうか。
男を意識したことがないというのは嘘だ。 本当は何度もときめいていた。
普段はへらへらしているくせに、いざと言う時に男を見せる藤堂をかっこいいと思ったことがある。
けれどそれが恋なのかまではわからないままだった。
だから、ああいった形じゃなければ、また、違った未来があったかもしれないのに。
なのに藤堂はこれが別れだと決めて、わざと嫌われようとした。
「嫌いになんて…なれないよっ」
それが逆に彼女を苦しめるなんて彼は思ってもいないだろう。
「愛してたよ。 どうか幸せに」
もうこの涙を止める術はない。