駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「これは成るようににしてなった。 間島」
どうやら斎藤は新撰組を辞める理由は話したくないらしい。
元々口数の少ない彼は、言葉を簡潔に伝えようとするので矢央は時々意味が分からなくて困る。
それでもしっかり者の斎藤が選んだ事なのだから、矢央が引き止めたところで彼もまた立ち止まることはないのだろう。
「はい?」
「お前は、いつの間にか立派になったな」
月明かりに照らされたのは、本当に珍しい斎藤の微笑み。
笑うと優しい顔立ちになるんだ。なんて惚けながら見つめていると。
「最初は何をするのも危なげで、すぐに流されてばかりで。泣き虫なのは代わりないようだが、それでも立派になった」
いつか矢央が新撰組を抜け出した時、斎藤が新撰組へ帰る手助けをしてくれた。
永倉や山崎の企みだと思っていたことも、実は斎藤の考えだったことを後で知った時は感謝ものだった。
一番関わりがないのが斎藤。
なのにいつも陰で支えてくれていたように思う。
「良い女になった」
「斎藤、さん?」
そしてこれは一体どんな意味があるのか。
ボーッと斎藤を見上げていたはずが、今はその顔を見上げることができない。
何故なら斎藤に抱き締められているから。
そして斎藤は矢央が慌てだす前に口を開いた。
「少し勇気をわけてくれ。暫くこのままで」