駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
暫くと言いながら、斎藤はその後直ぐに離れた。
また斎藤を見上げる形になって。
「これからまたお前にとって過酷なことが起こるやもしれぬ。 それでも、決して忘れるな」
沖田に負けず劣らずのその白い掌が矢央の頬を撫でると、夜空を背にした斎藤はまた微笑む。
「己の誠を」
斎藤はそれだけ言うと何事もなかったように立ち去った。
残された矢央は夜空を見上げ、満天に広がる星を見つめる。
何かが変わる。
そんな予感がして、肌寒さに腕を擦った。
「二人とも置いていかないでよ…」
いなくならないで。
もう誰も失いたくないんだから。