駆け抜けた少女ー二幕ー【完】



「平助、本当に行くのかよ?」


うっすらと星が見えるくらいの朝方、誰にも知られず新撰組を出ようとしたのは後ろめたさから。


しかし長い付き合いの彼等には藤堂の行動は読まれていたらしく、荷物を持って裏手から出ようとした藤堂を待っていたのは永倉と原田。



「新八さん、左之さん」


二人共先程まで布団の中にいたのか、着流し姿のまま藤堂の行く手を阻む。


「挨拶もなしかい?」


いつもは緩く結んでいる襟足部分の髪がさらっと風に靡き、永倉は鬱陶しそうに髪を掻き上げる。


「……うん、ごめん。 あと、今までありがとね」

「っなんだよそれ! まるで一生の別れみてぇじゃねぇかよっ!!」


原田はいてもたってもいられず、俯いたままの藤堂の胸ぐらを掴み上げる。



原田の背に合わせて浮かぶ身体は、爪先が辛うじて地面につく程度で、苦しいはずなのに呻き声すら上げない藤堂に原田はグッと奥歯を噛んだ。


「それがお前の決めた道なんだな?」

「………」

「俺達と別の道を歩くのが、お前の出した答えなんだな?」


ゆっくりと近寄ると原田の手に手を添えて、藤堂を開放するように促した。

不服そうに眉を吊り上げた原田だったが、永倉の緊迫した空気に圧倒され何も言えない。



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