駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「皆、最近おかしいですよ。 私の心配なんかより、自分達の心配した方がいいんじゃないですか」
「へえ、いっちょまえに意見までするようになったわけだ」
「だっだから!」
いい加減髪を弄るのを止めてほしい。
そしてそんな甘い声で、耳元で囁かないでほしい。
髪だけじゃ物足りなくなったのか、土方は矢央の肩を抱き寄せるとその髪に口付けを落とす。
「土方さんっっっ」
「ちょっと息抜きさせろよ。 それが嫌なら、餓鬼のままでいな」
「意味分かりませんからっ!」
ーーー中身はまだ追い付いてないか。
と、心の中で安堵している少し矛盾した己の心に苦笑いだ。
「なあ、少し考えてほしいことがある」
急に真剣になった土方を戸惑いながら見上げる瞳は、徐々に大きくなっていく。
この土方の提案は、この先の矢央を思っての提案だったが矢央は悲しそうに唇を噛んだ。
「今すぐじゃねぇ。 でもいつか、お前は決断しなきゃなんねぇはずだ。 どうしたって矢央、お前は女なんだから」
この話は、まだもう少し先のこと。
だから今は悩まなくていい。
ただ、いつか来るその時に備えて覚えておいてほしい。
土方が土方なりに考えた、矢央の居場所を。